VR音響の難しさ

VRで没入感を演出する場合、「音」「音響」というのは非常に重要な役割を果たします

音の聞こえる方向、距離、空気感などですね

 

しかし、現実と同じような音響をソフトウェア的に再現しようとすると結構難しいです

 

 

普段、僕たちは何気なく音を聞いて様々な判断を無意識にしていますがVRゲームなどのVRコンテンツで現実と遜色ない没入感を音響で再現しようとするといろいろな問題が立ちはだかります

何故、現実の音響をソフトウェア的に再現しようとすると難しいのか

人によって頭や耳の形が違うから

頭や耳の形によっても音の聞こえ方というのは変わります

つまり、同じ音であっても人によって聞こえ方が違うということです

 

例えば、録音した自分の声を聞くとすごく変な感じがしますよね

何故、録音した自分の声を聞くと変なのかというと、自分の声をリアルタイムで聞く場合は「実際に耳から聞いている自分の声頭蓋骨や口腔などに反響した音」を聞いています

しかし、録音した自分の声を聞く場合は耳からだけで自分の声を聞いているから

というのが理由です

 

この「頭蓋骨や口腔などに反響した音」のことを「骨導音」といいます

骨伝導的なあれですねw

 

普段、認識している自分の声(骨導音あり)と録音して耳から聞く自分の声(骨導音なし)でかなり聞こえ方は違うので、頭蓋骨や耳の形で音が変わるというのも頷ける話です

音には様々な構成要素がある

VRコンテンツで音響を再現する際、音の要素は3Dの「縦」「横」「高さ」だけだと思われがちですが、実際の「音」には様々な要素が存在します

例えば、近くの音より遠くの音の方が音量は小さいというのはわかりますが、音量以外にも「音の立ち上がりの速さ(アタック)の違い」や「遠くの音ほど高音域の減衰が早い」などの要素があります

 

遠くの音ほど高音域の減衰が早い」というのは低音域の方が遠くまで聞こえやすいということです

夜中に遠くで爆音の音楽が鳴っていたりした場合、低音だけ聞こえてきたり、防音室の外にいても低音だけは聞こえたりする経験があると思いますが、あれですw

 

現実の音の「距離による音量変化」や「音の立ち上がりの速さ(アタック)の違い」「高音域の微妙な減衰」など数値にすればとても小さいものです

しかし、人間の聴覚はそれらの精妙な変化を聞き取って音の方向や距離を把握しています

実際には空間の大きさによる「初期反射」や「残響」など、もっとたくさんの要素が関係し合って現実の音というのは存在しています

 

更に、音を構成するこれらの要素の変化具合は単純なものでもありません

例えば、距離が2倍になったから音量も2倍小さくすればいいというものではありません

そういったアルゴリズムを違和感のないものにするのも大変そうですね…

同じ音でも人によって聞こえ方も違うのでしょうし…