ダダイズムとは-歴史、概要、そして現代におけるダダイズム思想

ダダイズム(Dadaism Dadaïsme)とは、理性を否定する芸術姿勢、芸術思想のことです

作為や意識を否定し、偶然性を重視する感じですね

 

後のシュールレアリスムの前身となる思想です

 

 

ダダイズムの起源は1910年代半ば、第一次世界大戦への抵抗と戦争の虚無感を依拠とする思想で「既成概念」「秩序」「常識」に対する「否定」「攻撃」「破壊」が最大の特徴となります

ダダイズム思想を持った芸術家を「ダダイスト」と言います

ダダイズムの歴史

初期ダダ(ダダ宣言)

起源は1914年から4年間続いた第一次世界大戦(WW1)を切欠にヨーロッパの複数の都市とニューヨークなどで同時多発的且つ、有機的にダダイズムの思想の潮流が発生しました

名称は1916年にトリスタン・ツァラが「ダダ」と命名(ダダ宣言

第2宣言

トリスタン・ツァラなどによってスイスのチューリッヒで行われたチューリッヒ・ダダと言われる運動は、キャバレー・ヴォルテールを活動拠点とし、煽動運動的要素もありました

 

キャバレー・ヴォルテールというのは、ドイツ人文学者フーゴー・バルによって1916年2月5日に開店したキャバレーのこと

このお店を活動拠点にしていたというわけですね

キャバレー・ヴォルテールの外観

 

チューリッヒ・ダダの活動の中で、1918年チューリッヒでトリスタン・ツァラにより第2宣言がなされる

ダダイズムからシュルレアリスムへの移行、そして終焉

ダダ宣言と第2宣言を行ったトリスタン・ツァラは1919年に活動の拠点をパリに移します(パリ・ダダ)

しかし、1922年頃にトリスタン・ツァラとアンドレ・ブルトンとの対立が先鋭化し、2年後の1924年にはダダから離脱したブルトン派がシュルレアリスムを開始(シュルレアリスム宣言)

これと前後してダダイズムは衰退し、勢いを失って行きました

 

数年後にトリスタン・ツァラとアンドレ・ブルトンは和解し、ツァラはシュルレアリスムに合流

その後、1945年頃にはシュールレアリズムも終息へ向かいました

ダダイズムの特徴

ダダイズムの最大の特徴は「理性と作為、意識の否定」にあります

ダダイズムの根底にあるのは戦争への抵抗、更に言えば戦争による破壊と殺人への抵抗です

戦争による破壊と殺人は人間の理性への信頼に疑問符をつけました

故に「理性」「作為」「意識」というものを徹底的に否定してみようという流れになります

 

「理性」「作為」「意識」を介さず作品を創造するために「偶然性」「無作為」に頼り作品を作るわけです

具体的には、文章を細かく切り、ランダムに並べた無意味な詩を作ったり、寝言を記録したり、酩酊状態での作品制作を行ったり…

 

人間は綺麗に整ったものよりも「フラクタル」「1/f」などのある種の「揺らぎ」にこそ美を感じます

方向性としては間違っているとも思えません

 

しかし、、、

 

無意味な努力と無意味な作品はダダイストも鑑賞者も疲弊させます…

目新しさがなくなると急速にダダイズムは衰退していき、その後の「シュールレアリスム」へと受け継がれていきました

現代に於けるダダイズム

ダダイズムはその無意味さ故に衰退してしまいました

しかし、その思想は現代に於いても消滅したわけではありません

現代美術や前衛芸術に於いてその思想は受け継がれています

そこに「ダダイズム」という名はないとしても…

 

無意味さというのはある種の「論理的に理解不可能な迫力」があります

それは、「狂気への畏怖」と言い換えてもいいかも知れません

 

現代に於いては「芸術作品」であろうと「工業製品」であろうと機能性と明瞭さが求められます

それは決して間違いではないし、個人的にもそうあるべきと考えています

 

しかし、違う視座(例えばダダイズム)があるからこそ見えてくるものもあると思いますし、今はまだその視座は意味をなさないかも知れませんが、「機能性」「明瞭さ」「満足感」が飽和し頭打ちになったとき次の段階へ移行するためのカギになるのかも知れません…